くまもと文化財プロジェクトの田中寿雄です。
一昨日、とてもショックな事が有った、首里城の消失です。早朝に近くの禅寺に坐禅に行っていて帰ったら家人から「ニュース見た?」と‥。それで首里城が燃えているのを知った。
文化財、特に素材が木や紙などは焼失で燃えるのは古来日本の常。火災や戦災、ちょっとした不注意も有れば人がワザと火をつけたであろう火事で、これまで色んな文化財も消えたであろう。私個人的な意見ですが、日本人と言うのはある意味、消えいくものに寛容?じゃないかと勝手に思っている。忘れるのが速いというか、無くなる物へのこだわりが少ない・すぐ忘れる・的なDNAが流れているんじゃないかとね。また外国人から「これは凄い」とか言われると急に注目しだすのも日本人では有るが‥。
ただ、精神的な意味での沖縄の象徴である首里城、実際の建築は昭和なのでしょうが、ニュースで見ていると、かなり沖縄の人の心に入っていたのでしょう。その悲しみがこちらまで伝わってきました。熊本城が土ぼこりを上げながら崩れかける姿と似ていましたね。そういう意味でも、重要文化財「細川家・波奈之丸舟屋形」は、長い年月を経て奇跡的にも全容を整えている数少ない、世界に誇れる物だと思う、火事や被災もですが全体が散逸分散せず今の世に伝わった、というのも熊本の力ではないかと‥。
今やその天井画は近くで鑑賞することは出来ないが、今回の実物と同じ天然顔料や金箔で完全復元して、一般に展示公開できるのはとてもいい機会だと思う。こんな時だからこそ重要だと、熊本の宝を見て感じて体感する事ができるんじゃないかと‥。そして、熊本の殿様が参勤交代時に使った船に乗ったような感じで迫力の171枚もの天井画の下で抹茶でも飲みたいものです。
この数年、日本画は自然と同化して描くもんだ、と実感しています。天然素材である緑青などはその日の気温や湿度で色つやも変化しますし、岩絵具は「色を乗せる感覚で」って感じが新鮮でしたね。その最初に描いたのが「細川家波奈之丸舟屋形」天井画の椿の絵でした。その作品は、もともと時計だった木枠を額縁代わりにして、今でも私の職場の天井に飾っています。