文化財を活かすには

【 試 作 】

⑫波奈之丸天井画9枚a

波奈之丸舟屋形は、幸いにも地震による目立った被害はありませんでしたが、天井画においては経年劣化による顔料の剥落や退色が進んでいました。地震後、九州国立博物館で剥落の進行を抑える処理がなされ、天守閣から熊本博物館へと移され、現在は重要文化財に適した空調管理のもと一般公開されています。ただ、公開とはいっても天井画は舟屋形内部にあるため、残念ながら一枚一枚を近くで観ることは出来ません。

そこで私達は、このような公開の難しい絵画文化財を現代において最大限に活かすには、実物と同じ素材、同じ手法による復元模写の制作が欠かせないと考え、行動を起こすことにしました。

復元模写作品は、重要文化財のように展示に制約などありませんので、もしそれが完成すれば、熊本の誇る絵画文化財を多くの市民に紹介し、展示公開していくことが可能となります。それは例えば、復興を目指す熊本城内や県内のみならず、熊本の復興を応援してくれた県外の方々の地域においても、感謝の意を表するような展覧会開催も可能となります。

今までにない切り口 

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 この波奈之丸天井画復元プロジェクトは、熊本の市民の手による本格的な復元プロジェクトです。市民自らが制作することによって、その伝統的技法と価値観を学び伝える人材となり、また、制作者の家族や友人など周りの人達は制作者を見守るかたちとなります。そしてそれが完成した際には、その復元された天井画は、制作者のみならず、見守って応援してくれた多くの人達にとっても、物を超えた特別な存在となります。

これは物としての文化財を遺すと同時に、それと同じ価値観を人間側にも遺していこうという試みでもあるのです。 将来、復元された天井画を観に来た人の中には、「この天井画はうちのご先祖様が描いた!」と誇らしげに孫に語るお年寄りもいるかもしれません。

 


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